2006年の暮れも押し詰まった大晦日にアルバイトをクビになった森美雪(加藤あい)は、すがる思いで派遣会社<ハケンライフ>の面接を受けた。
その結果、やっとのことで派遣先が決まり、老舗の食品会社<S&F>に面談に出掛けた。
面談の席で、美雪は経験も自信もなかったが、何とか採用されたい一心でつい見栄を張り、できもしないパソコンを得意だと言ってしまう。
一方、派遣先<S&F>社の面談相手で、美雪を採用するかどうかの意思決定者でもある営業部長の桐島(松方弘樹)は、「ところで、大前春子(篠原涼子)さんは来てくれるんだろうね?」と、<ハケンライフ>のマネージャー・一ツ木(安田顕)に尋ねた。
おどおどしている美雪に不安は残るが、春子が来てくれるならと美雪の採用が決まった。
こうして、何とか働き口が決まった美雪と春子が派遣された<S&F>社のマーケティング課は、新任の主任として配属された里中賢介(小泉孝太郎)以下、新入社員の浅野務(勝地涼)、嘱託の小笠原繁(小松政夫)で構成される小規模な部署だったが、賢介に期待を寄せている桐島部長の命により、米のデータ分析とそのプレゼンを任せられることになった。
同社の花形部門である営業部と、サポート部隊の役割を担うマーケティング課は一丸となって、来たるプレゼンの日を目指していたが、仕事の遅い美雪がセキュリティ上のルールを破って、プレゼンの前日に社内データを自宅に持ち帰り、翌朝寝坊をしたため乗ったタクシーの中にそれを忘れてきてしまう。
マーケティング課は大ピンチ。
美雪の乗ったタクシー会社を課内総出で探している中、いつものように淡々と自分の仕事をこなしている春子に賢介は助けを求めるが、恐持ての印象どおり、春子ににべもなく断られてしまう。
遂にプレゼンの当日を迎えるが、肝心要の社内データは見つかるわけもなく、途方に暮れる美雪とマーケティング課の社員たち。
ところが何の気紛れか、突然大前春子が、その後事故を起こして廃車となってしまったタクシーを廃車置場で発見し、大型クレーンを操作してスクラップ寸前のタクシーを持ち上げ、車内から美雪が置き忘れた社内データが入ったカバンを回収し、美雪のピンチを救ってくれたのだ!
一体、大前春子の気紛れ人助けは何が理由だったのか?
その後、この職場で背伸びをしながらドジばかりを踏み、先輩女性派遣社員たちからは陰湿ないじめに会い、営業部の男子正社員からは「パシリ」扱いされる美雪ではあったが、このドジでのろまな亀を人知れず助けていたのが、実は、コワーイ先輩だと思っていた大前春子だった。
また、美雪は、自分が派遣されたマーケティング課の主任、仕事はあまり出来そうにないが情に厚い里中賢介に一目惚れ。
美雪にとっては、ドジといじめが続く毎日ではあるが、亀が歩みは遅いが着実に前に進むが如く、失敗を貴重な教訓としながら、持ち前の向上心とやる気で、スーパー派遣社員への道、そして里中賢介への熱い思いを心に秘めながら、美雪は一歩一歩粛々と<ハケンライフ>を歩んで行こうと決意したのだった。
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とまあ、1980年代後半のバブル経済絶頂期だったら、「恋するハケン社員ビンビン物語」みたいなタイトルで、ドジでのろまな亀の森美雪と、上司で「教官役」の里中賢介が主人公となった、“大映テレビ的”な恋物語のお仕事ドラマが展開されたことでしょうが、今はバブル崩壊後の「失われた10年」の傷がようやく癒され、とはいっても現実には格差社会が厳然と蔓延しつつある2007年の閉塞感を打ち破る存在として、時代は「コワーイ先輩派遣社員」の大前春子に主役を譲りました。
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ところで、このドラマの「仕掛け人」として、私は、日テレプロデューサーの櫨山裕子氏と、脚本家の中園ミホ氏の名前を挙げましたが、
http://ryuunosu.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_0d62.html
実は、さらに裏の仕掛け人が存在するのではないかと睨んでいます。
それはズバリ、「デンパク」に代表される広告代理店でしょうね。
それも、日テレビルがある新橋というか、汐留地区にあるD社が有力候補なのではないかと思っています。
そのように推測した根拠ですが、いくつかあります。
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その1:「企画書」至上主義
この会社では、やたらと企画書が登場します。普通、老舗の食品会社の営業部だとしたら、泥臭く地道な営業スタイルというのが主流で、取引先との人間関係をいかに構築するかというのが重要視されますが、この会社の場合、社内外へのプレゼンを行うシーンがたびたび登場し、何か非常にスマートな印象を受けるとともに、食品会社の営業部やマーケティング課というよりは、広告代理店の職場のような印象を受けますね。
また、大前春子がスーパー派遣社員であることを示すための証拠として、「素晴らしい企画書を一瞬にして仕上げる」というシーンが何回も登場しており、とにかく、「企画書をすばやく仕上げる=できる社員」という図式が出来上がっているのも、いかにも広告代理店が考えそうな発想です。
その2:マーケティング重視主義
里中賢介が新任の主任として配属されたマーケティング課は、弱小部署の落ちこぼれ集団的な設定という割には、ドラマの中では常に大活躍しています。
花形部門である営業部のサポート部署とのことですが、結局はマーケティング課の出したアイデアや企画書が通ったり、ネットでリサーチした調査資料やマーケティング課が実施したアンケート結果に、営業部は頼りきりです。
まるで、まずマーケティングデータを集めてから仕事を始めないと失敗するぞというような主張が見え隠れしていますが、こういうリサーチやアンケートの実施は、もちろん広告代理店が最も得意とするところです。
どんな仕事にもまずは(広告代理店の)マーケティングありきと、ちょっとサブリミナル効果を狙っているようですね。
その3:「仕掛け」がダイリテンっぽい
このドラマですが、まず事前リサーチをいろいろと実施していて、派遣社員の実態や、派遣を採用する側の事情もいろいろと調査した上で、それを時にはデフォルメして面白おかしく描いたり、またある時には非常にリアルに描いたりすることで、メインターゲットと想定していた、今や職場の主流派を形成しつつある非正社員系女性層の共感を得ようと企画されたように思います。
ところが、メインターゲットの女性層以外にも、男性視聴者というか、老若男女にも受けたというのが面白い点で、そこには、「木枯し紋次郎」や「プロジェクトX」的な味付けが中高年おじさんたちのハートをガッチリキャッチしたという要素もありました。
また、ドラマの放映開始前に、メインターゲットを対象にした試写会を開いたり、ホームページには「相関図」という、これまた特に女性視聴者がよろこびそうな仕掛けを盛り込んでおり、この点も、いかにもダイリテンっぽい匂いがしますね。
なお、日テレビルがある、新橋駅・汐留地区近辺では、地下街の天井を支える巨大な柱に、「ハケンの品格」番組宣伝広告がずらりと並べられ、また東京近郊の主要駅にも同様な看板広告が出されていましたが、そういった「選択と集中」戦略も、ダイリテン的なマーケティング手法の1つです。
ちなみに、汐留地区には、世界最大規模を誇る広告代理店D社の本社ビルがそびえ立っており、そのお膝元にライバルのH社が、クライアント関連の看板広告を堂々と出すというのはちょっと考えにくいので、今回の仕掛け人は、やはりD社なのではないかと思います。
その4:スポンサー=製作資金提供者集めも広告・宣伝の玄人っぽい
このドラマのスポンサーには、人材派遣会社2社が呉越同舟で名を連ねておりますが、当初のメインターゲットを女性派遣社員予備軍と考えると、例え2社で競合しても有望な人材を捉まえられるならば、CMスポンサーとしてのメリットは十分ある、とダイリテン側に説得されたのでしょう。普通は競合する業界の会社は、特番のような長尺物大型企画以外は、同じ番組のスポンサーにはならないものですが、業界で競合する2社が同じドラマのスポンサーになったというのはちょっと珍しいケースですね。
このドラマを、メインキャストたちの年齢層である30歳前後、すなわちメインターゲットにも親近感を感じてもらえる、「アフターバブルの余波をもろに受けた“失われた10年”世代」向けに、「アルバイトやフリーター、あるいはニートのような不安定な生活を脱却して、派遣社員として“地に足の着いた暮らし”を目指そう」という主張が盛り込まれたドラマと捉えれば、一種の「タイアップ広告ドラマ」としての広告効果は非常に大きなものがあることでしょう。
元々、午後十時から始まる「水十ドラマ」は、今やゴールデンタイム的な扱いを受けつつある午後九時始まりのドラマに比べて、製作資金的には苦しいものがあると思われますが、今回は、メインスポンサーの顔触れを見ると業績好調な企業(ただし、諸々の規制で9時台のドラマには出広できない企業もあるようですが)が多く、製作資金を比較的潤沢に得られたのではないでしょうか。
また、ドラマの舞台となった老舗の食品会社<S&F>ですが、このネーミングで想起される会社名は、“カレーの王様”たる1社しか思い当たらず、ある意味宣伝効果は抜群なわけで、実はD社の有力クライアントの1つで裏スポンサーとして出資しているのではないかとさえ勘ぐってしまいます。
その結果、スポンサーサイドからの潤沢な資金が得られ、メインターゲット対象の事前試写会や、駅周辺の看板広告などの積極的な広告・宣伝戦略を採用することができたと思われ、そういった、ダイリテン的発想によるマーケティング戦略が、高視聴率という勝利をもたらしたともいえるでしょうね。
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まあ、何事にも「裏」はありますが、なかなか凝ってますね。
明日の第9話もそういう視点でちょっと観ると、また違った側面が発見できるかもしれませんよ。